「転勤が決まったが、戻ってきたら今のマンションにまた住みたい」
「住み替えを考えているが、今のマンションは売らずに置いておきたい」
「子どもが大きくなったので一時的に住み替えるが、夫婦2人になったらまた今のマンションに戻りたい」
住み替えや転勤などで今住んでいるマンションを離れなければならないとき、多くの人が考えるのが、「マンションを売却するか賃貸に出すか」ではないでしょうか。
誰でもマイホームには愛着があるものなので、売らずに「とりあえず賃貸に出そう」「賃貸に出したら家賃収入で儲かるかも」と、考える人もいるかもしれません。
しかし、深く考えず安易に賃貸に出してしまうと、結果として損をしてしまうことになるかもしれないのです。
この記事では、マンションの売却と賃貸はどっちが得なのか、マンションを売却した場合と賃貸に出した場合の収支計算、賃貸に出してもよい条件などをご紹介します。
マンションの売却か賃貸、どっちが得?
マンションを売却するのではなく賃貸に出すことを検討している人は「将来また住むかもしれない」、「賃貸にすると家賃収入が入るので得するかもしれない」と考えているのかもしれません。
たしかに「家賃収入」と聞くと、なんだか儲かりそうな気がしますよね。
賃貸に出せば、「家賃収入」が入ってきて本当に得をするのでしょうか?
この章では、マンションを売却するのと賃貸に出すのでは、どちらが得なのかについて考えてみたいと思います。
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マンションを賃貸にするメリット
住んでいたマンションを賃貸にすると、2つのメリットがあります。
1. 家賃収入が得られる
マンションを賃貸に出すことの一番のメリットは、家賃という不労収入が得られることでしょう。
分譲マンションは一般的に、構造がしっかりしている、設備が整っている、住民のマナーがよいなどの理由から、周辺の賃貸マンションの家賃よりも高い家賃で貸せると言われています。
2. マンションにかかる費用をマンション賃貸の経費として計上できる
不動産所得を申告する確定申告の際、以下のような費用を経費として家賃収入から引くことができ、節税することができます。
- 固定資産税、都市計画税
- 住宅ローンの金利
- 管理費、修繕積立金
- 修繕費、ハウスクリーニング費
- 損害保険料(火災保険、地震保険など)
- 広告宣伝費
マンションを賃貸にするデメリット
収入がある、節税のメリットがあるのに対し、マンションの賃貸には5つのデメリットがあります。
1. 空室リスクがある
借り手がつかずマンションが空室になれば、当然家賃が入ってきません。
家賃収入をマンションの住宅ローン返済に充てている場合、新居の家賃やローンとの二重払いになってしまいます。
また、たとえ空室になっても、所有している限りマンションの管理費や修繕積立金、固定資産税は払い続けなければなりません。
家賃収入がないのに、マンションの住宅ローンのほかに固定資産税、修繕積立金や管理費を支払っていくのは大変です。
仮に空室が長く続けば、どんどん赤字が膨らみ、どうしようもなくなってしまったということにもなりかねません。
2. メンテナンス費用がかかる
マンションのさまざまな設備、例えば給湯器の交換や故障した場合の修理費用などは、貸主が負担しなければなりません。
あまりにも設備が古いと借り手がつかないこともあるので、定期的にキッチンなどを入れ替える必要があります。
また、入居者が退去すれば、新しい入居者が入る際のハウスクリーニング費もかかります。
空室を作らないためには部屋の設備も整えておかなければならないため、修繕や設備の入替えなどのメンテナンス費用は思いのほかかかるものなのです。
3. マンションの管理が大変
隣人との騒音問題などのトラブル、借り手が家賃を滞納した場合の督促など、オーナーであるあなたは様々な問題に対応しなければなりません。
これらの管理を不動産会社に依頼することもできますが、その場合は家賃の5%ほどの管理委託費を不動産会社に支払うことになります。
なお、管理委託費は空室の場合でも必要です。
4. 一度賃貸に出すと、こちらの都合で借り主に出ていってもらうのは難しい
マンションなどを賃貸する際、借主と貸主の間で借家契約を結ぶことになります。
借家契約というものは、そもそも借主を保護するためのもので、借主に有利な内容の契約になっています。
そのため、一度賃貸に出すと、家賃滞納などの正当な理由がないのに貸主のほうから契約解除したり契約更新を拒絶したりすることはできません。
つまり、貸主の都合で賃貸をやめることはできないのです。
転勤で遠隔地にいたが戻れることになったので、貸し出していたマンションに戻りたいと思っても、入居者が拒否すれば、無理に退去させることはできません。
また、賃貸をやめて売却しようと思っても、そのときに入居者がいて、入居者が退去を拒否すれば、出ていくまで売却することはできません。
転勤で戻ってくる時期がわかっているのなら、期限付きで貸し出すという定期借家契約で賃貸するようにしましょう。
定期借家契約とは
貸主が契約の期間を自由に決めることができ、契約の更新もないため、契約期間の終了に伴い確実に明け渡してもらえる契約。
ただ、住める期間が決まっているため、相場よりも家賃を少し低く設定しなければ借り手がつきにくいといったデメリットもある。
普通借家契約とは
家賃を滞納しているなどの正当な理由がない限り、貸主のほうから賃貸借契約を解除したり、契約更新を拒否することはできない契約。
一般的な賃貸借契約は普通借家契約である。
5. 事故物件になる可能性がある
もし貸し出している部屋で殺人や病死などが起きた場合、あなたのマンションは今後事故物件として扱われることになります。
事故物件になると、当然家賃を下げざるを得ない上に、家賃を下げてもなかなか借り手がみつかりません。
また、将来売ろうと思っていたとしても同様に、相場よりも安い額でしか売却できなくなってしまいます。
このように、賃貸にはデメリットがたくさんあるのです。
デメリットの中でも、特に致命的といえるのは、空室リスクです。
空室が続けば家賃収入もなく、家賃収入がなければマンション管理にかかる費用を経費として計上して節税することもできないので、結局のところ空室が続けば賃貸のメリットは1つもなくなってしまうわけです。
マンションを売却する場合と賃貸にする場合の収支を比較
前章で、賃貸には致命的なデメリットがあるとお話しました。
次に、この章では、実際にマンションを売却・賃貸した場合の収支を具体的に計算し、最終的に手元に残る額を比べてみたいと思います。
マンションを売却した場合の収支は明確
マンションを売却する際にかかる手数料・費用には以下のようなものがあります。
- 印紙税
- 登録免許税
- 司法書士費用
- 仲介手数料
- 繰り上げ返済手数料
マンション売却によって手元に残る金額は、以下の計算式によって求めることができます。
例)3500万円で購入したマンションを2,700万円で売却する場合に手元に残る金額
2700万円(売却額)- 2,393万5,800円(諸費用 + ローン残債)= 306万4,200円
このように、マンションを売却した場合の収支は、入ってくるお金、出ていくお金ともにはっきりしており、手元に残るお金が確定しています。
マンションを賃貸に出した場合の収支は確定できない
マンションを賃貸に出した場合の収支計算をすることは、あくまで入居者があって家賃収入があるという前提になってしまうので、あまり意味がありません。
そのため賃貸の場合、空室になった場合にいくらの持ち出し費用が発生するか、空室が続いた場合、その費用を払い続けられるかを考えたほうが得策です。
空室になれば家賃収入がないので、以下の費用が全て持ち出しになります。
賃貸はあくまで、入居者があってナンボの世界なのです。
賃貸マンションが空室の場合、1年間でかかる費用
必ずかかる費用 | |
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住宅ローン | 月8万5000円×12=102万円 |
管理費・修繕積立金 | 月2万円×12=24万円 |
固定資産税 | 年間9万円 |
合計 | 135万円 |
突発でかかる費用(給湯器を交換しハウスクリーニングを行った場合) | |
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給湯器交換 | 約12万円 (10年以上は修理不可が多い) ※給湯器修理は約1万円~6万円 |
ハウスクリーニング (3LDK) |
5万円~8万5000円 ※2LDKなら3万円~7万円 |
合計 | 20万5,000円 |
賃貸マンションが空室の場合、1年間にかかる費用は155万5,000円
これに加えて、不動産会社に管理委託すれば管理委託料、広告宣伝費などがかかります。
入居者がいればこれらの費用は全て家賃収入でまかなえますが、仮に長期間空室が続いた場合、新居のローンや家賃のほかにこれらの持ち出し費用を払い続けることになり、負担が重いのは一目瞭然です。
マンションは売却のほうが賃貸よりも損しない
賃貸では、継続的に家賃収入があれば得するかもしれませんが、空室が続いた場合の損失が大きいということがわかりました。
さらに、賃貸経営の手間や事故物件になるリスクなどのデメリットも加味すると、マンション売却と賃貸では、売却のほうが損しない可能性が高いと言えますね。
賃貸にすると家賃収入が入ってきて得しそうだなと思ってました。
賃貸は、物件の管理や空室リスクなど、意外と大変なんですよね。
ただ、マンションを離れるなら売却しか道がないわけではないんですよ。
次の章では、賃貸に出しても損しない条件をご紹介します。
マンションを売却せず賃貸に出してもよい条件2つ
先ほど、マンションは売却するほうが損しないと言いましたが、それでもさまざまな事情でどうしても売りたくないという人もいるでしょう。
ここでは、賃貸を検討してもよい条件を2つご紹介します。
立地条件のよいマンション
駅から近い、買い物や病院など生活に便利な立地である、治安がよい、など、賃貸の需要が高い便利な立地条件のマンションなら、賃貸に出しても問題ないでしょう。
このような物件は、空室リスクが少なく、地価の変動の影響を受けにくいため、安定した家賃収入が見込めます。
転勤などでマンションを離れるが戻ってくる時期がはっきりしている
転勤で一時的にマンションを離れるが3年後には戻ってくるなど、戻ってくる時期がはっきりしている場合は賃貸に出してもよいでしょう。
ただ、もし借り手がつかなかった場合、新居の家賃とマンションの住宅ローンの二重払いはできるのかなど、事前に十分に資金計画を立てておくことが大切です。
遠隔地や海外への転勤などでマンションの管理が全くできないという場合は、リロケーションサービス(留守宅管理サービス)を利用するという方法もあります。
リロケーションサービスとは?
リロケーションとは、留守宅の入居者募集や管理、入居者居住中のクレーム対応など、留守宅の管理全般をリロケーション会社に委託できるサービスのことです。
リロケーション会社から紹介された借主との契約は全て定期借家契約なので、契約した期間が終われば退去してもらえるため、転勤から戻ってきてもスムーズに住むことができます。
リロケーション契約では、以下のようなサービスが受けられます。
- 入居者募集(定期借家契約)
- 家賃管理(回収、滞納時の対応)
- 入居者からのクレーム・トラブル対応
- 貸し出し中の修理対応
- 賃貸期間終了時の明け渡し対応
このように、マンションの管理を全て任せられるので、海外や遠隔地への転勤で自分でマンションのメンテナンスができない人にも安心です。
ただ、入居者との賃貸借契約は定期借家契約となるため、普通借家契約より1割~3割程度賃料が安くなることが多く、さらにそこから1割から1.5割ほどリロケーション会社への手数料がかかります。
最近では、リロケーション会社のほかに大手不動産会社も多く参入しているので、各社のサービス内容を比較して信頼できる会社を選びましょう。
将来売るつもりなら、とりあえず賃貸ではなく今売るほうがよい
あなたのマンションが立地条件のいいマンションなら、今すぐは売らずにとりあえず賃貸に出そうと思うかもしれません。
「将来地価が上昇しマンションの価格が上がるかもしれない、そのときを待ってから売ろう」と考える人もいるでしょう。
しかし、いくら立地条件がいいとはいえ、爆発的に価格が上がることは考えにくく、あったとしても一部の限定的な地域のみです。
それよりも、考えるべきはマンションの築年数の経過による値下がりでしょう。
普通は年数の経過とともにマンションの価格は下がるものなのです。
さらに、賃貸に出すことによって部屋の傷みもひどくなるため、将来マンションを売るつもりでいるのなら、数年賃貸に出して売るよりも、今売ることをおすすめします。
注意!居住用マンション売却の税制優遇は住まなくなってから3年目まで
居住用マンションを売却し売却益が出た場合、さまざまな税制優遇の特例が受けられます。
しかし、これらの特例は、持ち主が住まなくなってから3年を経過すると受けられなくなるため、注意が必要です。
賃貸に出している間に気がついたら3年たっていたということのないよう、いつか売るつもりなら早めに売却する方がよいでしょう。
マンション売却における税制優遇について(3,000万円の特別控除)
立地条件の悪いマンションは早く売却したほうがよい
立地条件の悪いマンションを賃貸に出した場合、損する可能性が非常に高いと言えます。
このようなマンションは、賃貸に出しても損をすることになるので、早く売却してしまったほうがよいでしょう。
なぜなら、不便な場所にあるマンションは、購入派のニーズはありますが、賃貸派のニーズは低いのが一般的だからです。
価格面や静かな場所に住みたいなどの理由で、購入派の人は、幅広い条件で物件を探している傾向にあります。
そのため、少々不便な場所にあるマンションでもニーズがあるのです。
しかし、賃貸物件を探している人は、駅から近いなどの生活に便利な立地であるかどうかを重視している傾向にあります。
つまり、売却よりも賃貸のほうが便利な立地が求められているため、不便な場所にあるマンションは賃貸には不向きと言えるのです。
【まとめ】マンションの賃貸は難しい!売却も検討しましょう
誰でも、愛着のあるマンションを手放すのは勇気がいるものです。
しかし、ただ、「なんとなく売りたくない」「将来住むかもしれない」という理由で賃貸に出すと、赤字が膨らんで、結果としてマンションを手放さなくてはならなくなるかもしれません。
どうしても売却したくない場合は、以下の点がクリアできるかどうかを慎重に判断することが大事です。
- 賃貸に出しても継続的に家賃収入が見込めるか
- 空室が続いてもマンションの維持費を払い続けられるか
まずは、ご自身のマンションがいくらで売れるのか、賃貸にした場合の賃料がいくらに設定できるのかなどを調べてみることから始めましょう。
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