戸建やマンションなど、不動産を売却したいと考えた時、おそらくどこかの不動産会社に相談されると思います。
ですがいざ不動産会社に査定をお願いしようにも、いろいろと不安があるでしょう。
「不動産査定はどこに頼めばいいの?」
「不動産査定はどんな流れで、行われるの?」
そこで今回は、不動産の査定方法について詳しく紹介します。
また査定方法だけでなく、査定までに必要な準備物や、査定前に知っておくとよい注意点も紹介したいと思います。
不動産査定を迷っている方は、一度この記事を読んで、モヤッとした部分を解消しましょう。
今回は、不動産の査定方法について解説していきます。不動産を売却するには、まず物件の査定をしなければいけません。あなたがお持ちの不動産と同じものは世の中に1として存在しないからこそ、「査定」がとても重要です。今のあなたの状況に照らし合わせて、どの不動産査定方法が適しているか本記事を読んで確認してみてくださいね。
不動産の査定方法は2種類ある
不動産の査定方法で一般的によく使われている査定方法は2種類あります。
それは「机上査定」と「訪問査定」です。
一般的によく使われる2つの査定方法
おおよその査定額が知りたい人向けの査定方法
机上査定よりも詳しい査定額がわかる査定方法
机上査定や訪問査定の他にも、自動でおおよその不動産査定額がわかる「AI査定(自動査定)」や、第三者に対して適正な価値の証明が必要なときに用いる「鑑定評価」があります。
ただAI査定と鑑定評価は、限られた人が利用する査定方法なので、今回は机上査定と訪問査定の2つについてそれぞれ解説していきましょう。
机上査定(簡易査定)で不動産を査定する
机上査定とは簡易査定とも呼ばれる不動産査定方法で、あなたが家に関する情報を不動産会社に伝え、その情報を元に不動産会社の担当者が家の査定を行います。
あなたは家にいながら、電話やインターネットで不動産会社へ査定を依頼し、必要事項を伝えるだけなのでとても簡単。
机上査定を依頼する際、不動産会社に伝える必要事項は以下の内容です。
- 不動産の立地(住所)
- 物件の種類(戸建て・土地・マンションなど)
- 土地面積
- 建物面積
- 築年数
- 方角
- 所有者の名前と連絡先
以上の内容をもとに、不動産会社は過去の不動産売買データや、国土交通省が定める土地の価格(路線価)を参考に、おおよその査定額を計算します。
ただ机上査定は、実際の家の環境や詳細は反映されていないので、不動産査定額の正確性には欠けてしまうので注意しましょう。
- 家を売るかどうかのメドを立てたい
- 今の家の価値を知っておきたい
訪問査定(詳細査定)で不動産を査定する
訪問査定とは、詳細査定とも呼ばれる不動産査定方法で、あなたのお家に不動産会社の担当者が訪問し、「実際に確認しないとわからないこと」を加味して詳しく査定を行います。
訪問査定の際に不動産会社の人が確認することは以下の内容です。
- 建物の劣化状況
- 設備の状況
- 敷地状況
- 接道状況
- 日当たり、眺望
- 周辺環境
- 法規制など
このように訪問査定は、お家の状況や周辺環境など、詳しい個別情報を反映させるので、机上査定よりも精度の高い査定額がわかります。
ですので、正確な査定額を知りたい方は訪問査定を依頼するといいでしょう。いきなり訪問査定をするのは気が引けてしまう方は、まずは机上査定を行ってから訪問査定を検討してみてもいいかもしれませんね。
- 家を売るのは決定している
- 引っ越しするので売却の段取りをはじめたい
以上の通り、不動産の査定方法には机上査定と訪問査定の2種類ありました。
あなたの今の状況ではどちらの査定方法が良さそうでしたか?
「まずは1度、不動産査定をお願いしてみようかな」と思った時に、依頼する不動産会社が思い浮かばない場合は、HOME4Uなどの一括査定サイトの利用がオススメです。
一括査定サイトなら、複数の不動産会社にまとめて査定依頼できるので、自分にあった不動産会社が見つかりやすくなります。
無料で査定してくれるので、査定価格を見てから売却するか決めたい方でも査定依頼しやすいでしょう。
不動産の査定方法ごとの査定の流れ
次に机上査定と訪問査定、それぞれの査定方法ごとの流れを解説していきます。
査定方法ごとの流れを知っておくと、あなたが不動産査定を依頼した時や、査定当日に焦らずスムーズに進められるので、順番に確認してくださいね。
机上査定の流れ
まずは机上査定の流れを見ていきましょう。
電話で机上査定を申し込む場合は、電話口で不動産査定担当者から質問されることに答えていくだけで、当日中もしくは翌日には不動産査定額がわかります。
一括査定サイトを利用して机上査定を申し込んだ場合は、次のような流れになります。
※ここではHOME4Uを使った流れを紹介しています。
机上査定の流れ
- パソコンやスマホで、HOME4Uにアクセスする
- 都道府県、市区町村を選択して、【査定スタート】をクリックする
- 査定したい不動産の情報を入力する(所在地や広さ、築年数など)
- 机上査定か訪問査定かを選択→机上査定を選択
- 査定結果を受け取る連絡先の入力
- 不動産会社を選択する(最大6社から選択可能)
- 電話もしくはメールで査定結果を受け取る
※ 査定結果は、早くて当日中~翌日に連絡が来ます
このように机上査定は、査定依頼から査定結果を受け取るまで非常にスピーディなのが特徴です。
ですから、おおよその査定額をすぐに知りたい人にとっては机上査定が最適かと思います。
なかには「簡単に査定額を知りたいだけだから、査定依頼後に営業電話がたくさんかかってきたら困る」という人もいるかもしれませんね。
不動産会社も商売ですから、場合によっては連絡がくるところもあるかと思います。
ですが、何度もしつこく売却を促すような連絡はほぼないので、安心して一括査定を活用してください。
もしも催促の連絡があった場合には「売却依頼する場合はまたこちらから連絡します」と伝えておくとよいでしょう。
訪問査定の流れ
次に訪問査定の流れを見ていきましょう。
電話で訪問査定を依頼した場合、不動産査定が必要な所在地の確認や、当日必要な書類関連の説明があり、訪問査定当日を迎えます。
一括査定サイトを利用し、訪問査定を申し込んだ場合は次のような流れになりますよ。
※ここではHOME4Uを使った流れを紹介しています。1~6までは机上査定とほぼ同じ流れです。
訪問査定の流れ
- パソコンやスマホ上で、HOME4Uにアクセスする
- 都道府県、市区町村を選択して、【査定スタート】をクリックする
- 査定したい不動産の情報を入力する(所在地や広さ、築年数など)
- 机上査定か訪問査定かを選択→今回は訪問査定を選択
- 査定結果を受け取る連絡先の入力
- 不動産会社を選択する(最大6社から選択可能)
- 不動産会社より連絡を受け、訪問日時を決める
- 担当者がお家に訪問し、査定実施(約1時間程度立ち会いが必要)
- 査定結果を聞く(電話、メール、書類郵送、訪問による説明)
※査定結果がわかるまで、数日~1.2週間かかります。
ちなみに上記8の訪問査定当日は、以下のような流れで査定が行われます。
このように訪問査定は時間や手間を要しますが、不動産の売却時には詳しい不動産査定額が必要ですので、お家を売ることが決まっている方は訪問査定を依頼しましょう。
不動産の査定を依頼する時に、どちらの査定方法にしようか迷われているなら、一括査定サイトを利用して複数の不動産会社へ机上査定を依頼し、印象の良かった不動産会社に今度は訪問査定を依頼するという使い方もよいでしょう!少々手間ですが、安心して不動産売却を進めるにはこういった方法もぜひご検討ください。
不動産査定の依頼前にしておく準備
不動産査定を依頼する際に、家の情報を聞かれたり、書類の提出が求められたりします。
ですから査定依頼をする前に、必要な情報や書類を集めておくことをオススメします。
不動産査定を依頼する前に必要なことは、おもに次の3つです。
不動産査定前の3つの準備
- 不動産査定に必要な書類を用意する
- 物件の瑕疵の有無を確認・整理しておく
- 土地の境界を確認する
この3つを準備しておくと、机上査定・訪問査定どちらの場合でも不動産査定の工程がスムーズに進みますので、順番に解説していきますね。
不動産査定に必要な書類を用意する
まずは不動産査定時に必要な書類の紹介をします。
不動産査定時に必要な書類がそろっていないと、正確な不動産査定額の算出ができなくなるので、事前に用意しておきましょう。
- 身分証明書
運転免許証やパスポートなど顔写真が載っていて、不動産査定を依頼したあなたと顔の照合ができるものにしましょう。
- 固定資産税納税通知書
毎年4月頃に不動産の所有者宛に送付される書類です。
固定資産税納税通知書に書かれている固定資産税評価額は、売却相場を算出する際の公的な参考資料となるので、不動産査定時にあればより信憑性の高い査定額が得られるでしょう。※固定資産税納税通知書に書かれている固定資産税評価額は、実際の市場価格の70%程度を目安にしており、逆にいうと記載の評価額を70%で割るとおおよその相場がわかるともいえます。
- 登記簿謄本
あなたが査定を依頼する不動産が木造なのか鉄骨なのか、広さはどのくらいか、権利関係はどうなっているかなどが書かれています。あなたの不動産の「履歴書」のようなものですね。
- 地積測量図
土地に関する公的な図面です。
地積測量図があれば、道路との境界や隣の家との境界が記載されているので、不動産査定時に算出すべき土地の面積が正確に把握できます。 - 建物図面
一個の建物の形や位置を示した図面のことで、建物の大きさも書いてあります。
建物図面は、建物を建てたときや増改築したときに、不動産の登記手続きで必ず添付することが義務付けられています。
この建物図面と現況を見比べて無断で増築している箇所がないかなどを確認するのです。 - 建築確認済証・検査済証
不動産査定をする建物が、建築基準法に合致しているか確認できるもので、増改築をした場合にも発行されます。建築確認済証・検査済証があれば違反建築物でないことが証明できます。
- リフォーム報告書(あれば)
お風呂場のみ、トイレのみ、などのリフォームであっても報告書があることで、リフォームした箇所を適切に査定評価することが出来ます。
増改築を伴うリフォームをした場合、先に解説した「建築確認済証」とセットにして残していることが多いですよ。 - 管理規約や管理組合の冊子(マンションの場合)
この冊子には、マンション内のルール、管理費・修繕費の額、共用部や専有部分の詳細が書かれています。
査定対象となる敷地や共用部分の持ち分(範囲)がどこまでか確認することが出来ます。
以上、不動産査定時に必要な書類を紹介しました。
不動産査定を依頼すると決めたら、まずこれらの書類がまず手元にあるか、確認してみてください。
各種図面や報告書などは、登記簿謄本など重要な書類として一緒に保管していることが多いです。
また不動産査定に必要な書類は、普段の生活ではあまり触れないものなので、クローゼットの奥や金庫の中などに保管しているかもしれません。
書類の準備が整っていれば、より正確な不動産査定額が算出できるだけでなく、不動産査定調査にかかる時間が大幅に短縮でき、早めに査定結果を受け取れますよ!
物件の瑕疵の有無を確認・整理しておく
不動産査定を受ける前に、家の状況や瑕疵の有無を把握しておきましょう。
瑕疵とは、物件のキズや欠点・欠陥のことです。
査定を行う不動産会社は、目に見える範囲は入念に確認を行いますが、見えない部分や過去の事情までは、依頼者であるあなたに聞かないとわかりません。
もしも把握している瑕疵があるなら、不動産査定当日に担当者に伝えられるよう整理しておきましょう。
不動産査定の担当者へ伝えるべき瑕疵の内容については、下記のとおりです。
- 心理的瑕疵物件
事故や事件、孤独死などが発生した物件で、一般的に受け手(買主)の気持ちに抵抗が生じる恐れのあることを言います。具体的には物件内で、自殺・他殺・事故死・孤独死があった、過去に火災事故があった、など人の死に関連する事情がある場合です。
- 環境的瑕疵物件
物件の近くに暴力団施設がある、お隣がゴミ屋敷や、ものすごい騒音を出すお宅がある、風俗店が近いなどの場合をさします。
- 法的瑕疵物件
「◯年後に該当物件上に道路を通す計画があるので建物を取り壊す予定があります」などの都市計画法や、その他消防法や建築基準法に違反している場合も法的瑕疵にあたります。
- 物理的瑕疵物件
物件自体に雨漏りやシロアリ被害、水道などのライフラインに欠陥がああり、修繕が必要な場合を指します。ただし欠陥がある箇所を売却前に修繕できれば瑕疵物件とならないので、4つの瑕疵の中で唯一、瑕疵を消せる可能性があります。
上記の瑕疵の中には、のちほど調べればわかることもありますが、査定を依頼するあなたでしかわからないこともあるので、現状で把握していることは伝えてください。
たとえば「5年前の台風で2階の天井の角から雨漏れがあった」「去年キッチンでボヤをだしてしまった」など、不動産査定の担当者に伝える際には具体的に伝えられるようにしておくとよいでしょう。
一見目に見えない瑕疵についてもしっかり伝えておくことで、お家の本当の価値がわかりますよ。
瑕疵物件の売却については、「事故物件をできるだけ高く売る方法」の記事でより詳しく解説しています。
土地の境界を確認する
売却したい不動産が土地付きの戸建て物件や、土地の場合は不動産査定の依頼前に、土地境界線の確認をしましょう。
なぜなら、売却したい土地の範囲がわからないと正確な不動産査定額が算出できないからです。
不動産査定において土地価格の算出は、土地の面積にその地域の坪単価をかけて計算していきます。
たとえば坪単価50万円の土地で、1坪分(たたみ2枚分の広さ)の誤差があれば、単純に査定額が50万円変わってくる、ということです。
土地の境界線は、地積測量図を見ればわかります。
地積測量図は今後不動産を売却する際に必要となりますので、手元にない場合は今の時点で取り寄せておくとよいでしょう。
地積測量図の入手方法
- 法務局の窓口へ行って請求する
- 法務局のホームページから、郵送で交付請求する
- 「登記ねっと 供託ねっと」から請求する
- 土地家屋調査士に、土地の確定測量図を作成してもらう(地積測量図が存在しない場合)
今後住み続けるにしても、境界を明確にしておく方が後々のトラブルを防げるので、ぜひ検討してみてください。
ちなみに不動産査定時に地積測量図が手元にない場合は、登記簿謄本に記載されている土地の面積で計算してくれるので、おおよその査定額が知りたいのであれば、地積測量図がなくても大丈夫です。
不動産査定の評点と査定額に有利なポイント
不動産査定を依頼するとき、なるべく高い査定額になればいいなと思いますよね。
そこで不動産査定の評点と、できるだけ希望に近い査定額をだしてもらうためのポイントを紹介します。
「建物」と「土地」における不動産査定の評点
不動産査定では、建物と土地について以下の点を査定されます。
- 建物の種類(戸建て・マンション)
- 建物の面積
- 建物の劣化状況
- 設備の状況(電気やガスが通っているか、太陽光発電システムがあるかなど)
- 交通の便(駅やバス停からの距離)
- 近隣の状況(街並み・スーパーまでの距離など)
- 環境(日当たり・眺望・騒音など)
- インフラ設備(水道・ガスなどの整備状況)
- 街路状況(方角・前面道路の幅員など)
- 敷地の形状(土地の間口、土地の形)
※国土交通省が推奨する不動産流通推進センターの価格査定マニュアルで使われる土地査定の評価ポイント
土地の査定では、上記の6つの評価ポイントに対し、プラスマイナスの評点をつけ、査定額を算出していきます。
土地や建物の条件がよいと、その分査定額も上がることでしょう。
ただ残念ながら、土地の条件を今から改善することはできません。
また建物の条件も、リフォームなどをすれば改善はできますが、お金や時間がかかるだけでなく、たとえお金と時間をかけても希望の査定額が出るとは限らないのです。
ですから、土地や建物の条件を改善すること以外の方法で、査定額に有利に働くためにできることを次に解説していきます。
不動産査定の評価を上げるためのポイント
不動産の査定時に、あなたのお家の価値を最大限に評価してもらうためのポイントは次の3つです。
不動産査定で評価してもらうためのポイント
- 建物の修繕履歴をまとめて記録しておく
- 耐震診断やアスベスト調査の報告書の用意
- マンション管理規約や管理組合の冊子の用意
どれも数分で出来ることですので、ぜひ用意してください。
1. 建物の修繕履歴をまとめて記録しておく
あなたのお家でリフォームをした箇所、防蟻施工(シロアリ予防)、外壁や屋根の修理、外壁塗装など建物の修繕を実施していたら、その内容と時期を紙に書き出しておきましょう。
建物の維持管理が行き届いていると証明することで、査定時にプラス評価されます。
たとえば築20年の木造住宅であれば、耐用年数が残りわずかとなり建物自体の残存価値は少ないけれど、「お風呂を3年前にリフォームした」「太陽光発電システムを昨年設置した」などが具体的にわかればそれぞれ加点されます。
2. 耐震診断やアスベスト調査の報告書の準備
家の耐震診断書やアスベストの使用状況についての報告書があれば、こちらも提出しましょう。
今後売却活動を進める際には買い手の安心材料となるので、査定時にも評価されます。
※診断書類は不動産査定のために準備するのではなく、あくまでも耐震診断など実施していれば手元にご準備ください。
3. マンション管理規約や管理組合の冊子の用意
マンションを売却する場合は、管理規約や管理組合の冊子も用意しましょう。
管理規約や管理組合の冊子があれば、管理費・修繕費の金額がわかるだけでなく、共用部のスペック(ペット飼育の可否、セキュリティ、駐車場、併設施設の条件や内容など)がわかるので査定時に重宝されます。
マンション共用部のスペックが、周辺で売出し中のマンションよりもよい要素であれば、査定額UPの可能性も期待できます。
訪問査定の場合には、お家のすべての箇所を確認しますので、物置き部屋=開かずの間…なんて状態は解消しておきましょう。ハウスクリーニングなど特別に費用をかけてキレイにする必要はありませんが、整理整頓してお家の中を確認しやすくしておくと印象アップでオススメです。
不動産会社で査定依頼するときの注意点
不動産査定を受けたあと、きっとあなたは「査定額がいくら位になるだろう」「できれば高い査定額がいいな」などドキドキしながら結果を待っていると思いますが、不動産査定の前後で注意してほしいことが2つあります。
査定依頼するときの注意点
- ずば抜けて高い査定額を出す不動産会社には要注意!
- 査定額は複数社で見比べること
まず、あまりに高い査定額を出す不動産会社には中止しましょう。
不動産会社の中には、相場よりも高い査定額を提示して、売主に「こんなに高く売ってくれるんだ!」を期待させて、契約を取ろうとするところもあるのです。
ですが実際に契約してみると、「なかなか売れませんねぇ…」などと言って売却価格の値下げを提案してくる…、なんてことも考えられます。
結果的に相場価格で売却できればいいですが、高い金額で売りに出したことでなかなか売れず、売却期間が長引いてしまう可能性もあるでしょう。
だからこそ2つめの注意点として、査定額は複数社で見比べることが肝心です。
不動産査定を複数社に依頼して査定額を見比べることで、およその相場がわかります。
もし1社だけ査定額が明らかに高い場合は、査定額の理由を詳しく聞いてみて、納得できそうなら売却を依頼してもよいと思います。
もしくは不動産査定額が高くなくても「A社は理由をきちんと説明してくれた」「E社の人は誠実そうな人柄なので安心して任せられそう」など、あなたのフィーリングも大切にしてください。
不動産査定額が納得できなかった場合は自分で計算してみよう
まずは実際に不動産会社に査定を依頼して、査定額を出してもらいましょう。
ですが査定を依頼してみて、「思っているより安かった」「不動産会社によって査定額がバラバラで基準がわからない」といった気持ちになるかもしれません。
もしも伝えられた査定額に納得できなかった場合、まずはその理由をしっかり不動産会社に説明してもらうのが第一ですが、自分でどのくらいになるか計算してみるのも1つの解決方法です。
不動産の査定額を計算する方法は大きく分けて3つあります。
不動産査定額の計算方法
- 原価法
- 取引事例比較法
- 収益還元法
原価法と取引事例比較法は、一般の戸建て住宅やマンションの査定額を知りたい時に使う方法なので、詳しくお伝えします。
収益還元法は、収益物件といって主に投資を目的とした不動産の査定時に使う方法ですので、今回は概要だけお伝えしますね。
原価法
まずは不動産の査定額を計算する方法の1つ、原価法について解説します。
主には戸建て住宅の評価時に使われますが、場合によって土地の査定時にも使われます。
原価法は、現時点で再度取得するのに必要な費用(=再調達原価)から、古くなった分を差し引いて(=減価修正)計算する方法です。
つまり今住んでいる家(中古住宅)を新築した場合に、材料費や人件費にいくらかかるかを調べて、そこから築年数分を引いて価値を算出するのです。
計算式は「再調達原価 - 減価格(築年数分)」となります。
家を新築した場合の材料費や人件費にいくらかかるかは、国税庁の地域別・構造別の工事費用表を参考にします。
たとえば東京都で木造の建物を建てる工事費用単価は1㎡当たり17.7万円です。
築年数分の減価格を計算する場合には、国税庁の減価償却資産の耐用年数表を参照します。
減価償却資産の耐用年数表
構造 | 用途 | 耐用年数 |
---|---|---|
木造 | 住宅 | 22年 |
木造モルタル造 | 住宅 | 20年 |
鉄骨鉄筋コンクリート 鉄筋コンクリート |
住宅 | 47年 |
レンガ造・石造・ブロック造 | 住宅 | 38年 |
木造住宅の耐用年数は22年ですので、再調達原価を22で割ったものに築年数分を掛けます。
以上を参考にして、仮に東京都で築10年、床面積100㎡の木造住宅を原価法で計算するといくらになるか見てみましょう。
計算の結果、東京で築10年、100㎡の木造住宅は965.4万円となりました。
この価格に、のちほど計算する土地の査定額を足して不動産査定額を導き出します。
一般的に土地の査定には、次に紹介する取引事例比較法で計算するので見ていきましょう。
取引事例比較法
取引事例比較法は、これから査定をする対象と似たような不動産の取引事例を出来る限り集めて、それぞれの土地の平米単価を計算し、そこに査定物件の個別要因(地形や地域など)の評価をプラスマイナスして算出する方法です。
取引事例比較法は、不動産会社による土地の査定時によく使われる方法で、マンションの査定時や、耐用年数オーバーした戸建住宅の査定時に使用することもあります。
では取引事例比較法での計算をみてみましょう。
- 成約事例A 105㎡で1,300万円→㎡単価123.9万円
- 成約事例B 110㎡で1,450万円→㎡単価131.8万円
- 成約事例C 130㎡で1,800万円→㎡単価138.4万円
成約事例ABCを参考に、このあたりの土地の平均は131.3万/㎡なので、仮にこの平均値で計算すると100㎡ならおよそ1,313万円になります。
※A・B・Cともに査定対象物件の近隣での成約事例を用いる
建物は先の原価法で約965.4万円と計算していたので、土地は取引事例比較法で約1,313万円として合算した場合、合計2,278.4万円となります。
もちろんこの方法はあくまでも基準となる計算方法であって、訪問査定でチェックされた個別要因の評価が加わりますのでご注意ください。
土地の価値を知るその他の方法として、国税庁の「路線価図・評価倍率表」を参照することもあります。
道路に「← 95 →」という数字があれば、その道路沿いの土地は「95,000円/㎡」という見方をします。100㎡の土地なら950万円という計算になりますが、路線価は市場価格の7~8割前後の評価と言われているので、実際の市場価格は1,187万円~1,357万円くらいという見方もできるのです。
収益還元法(直接還元法・DCF法)
続いて収益還元法です。
先にお伝えしたとおり、収益還元法は収益物件といって、主に投資を目的とした不動産の査定時に使う方法なので、あなたがご自身の不動産の査定額を計算してみる場合にはあまり適していません。
不動産査定の評価方法にはこういった方法もあるんだな、という程度にご確認ください。
収益還元法には、直接還元法とDCF法の2つ方法があります。
直接還元法
将来生み出すであろうと期待される家賃収入をベースに計算します。
1年の利益から経費を引いて、それを還元利回りで割るというものです。
※利回りとは、投資金額に対する収益の割合のことです。還元利回りは物件周辺の平均実質利回りを参考にします。
たとえば直接還元法で下記の不動産を査定してみます。
- 毎月10万円の家賃が得られる物件→年間120万円の家賃収入
- 経費は毎月2万円→年間24万円の経費がかかる
- 物件周辺の平均実質利回りは6%
計算式は「(120万円-24万円)÷6%=1,600万円」となるので、上記の不動産を直接還元法で査定すると1,600万円と算出できます。
DCF法
DCF法はディスカウントキャッシュフロー法の略で、将来得られる収益を現在の価値に割り引いて計算し、売却予定価格と合計して不動産の価値を算出する方法です。
毎月10万円の家賃が得られる物件では、年間で120万円得られますが、仮にその120万円を銀行へ全額預金し毎年1%の利子がつくと考えてみると、1年後には120万円が121.2万円になっていると考えます。
しかしDCF法では、将来のリスクに備え逆計算しておく計算方法なので、1年後に受け取る120万円は、今の価値になおすと118.8万円となる考え方をします。
DCF法の計算式はたいへん複雑ですので割愛しますが、DCF法による評価は不動産鑑定士など専門家が使う手法なので、こういった考え方で不動産の査定評価をすることもあると理解しておくだけで十分ですよ。
不動産の査定方法に関するよくある質問
ここからは「不動産査定を依頼してみようかな」と考えているあなたへ、事前に確認しておいていただきたいよくある質問をまとめました。
不動産査定で余計な費用をかけないためにもぜひ確認してください。
ポストに入っている不動産売却のチラシは信用してもいいの?
たまに、家のポストに「即日査定!」「あなたの家、売ってください!」といった、不動産査定や不動産売却を勧めるチラシが入っているかと思います。
ですがそれらのチラシを鵜呑みにして査定をお願いしてもいいものか不安に思っている方もいるでしょう。
別に査定に出すこと自体は問題ありません。査定方法の一つとして、そういったチラシを利用するのもいいかと思います。
ただし、チラシに書かれている不動産会社にだけ査定を依頼するのは危険です。
正しい査定をしてくれるかわかりませんし、ひょっとすると不動産会社の都合のいいように話を進められてしまうかもしれません。
記事の中でも紹介しましたが、査定を依頼するときには、必ず複数の不動産会社に依頼しましょう。
不動産査定前にはリフォームした方がいいの?
不動産査定前にリフォームをして「家の価値をあげよう」とか「高い査定額をだしてもらおう」と思いがちですが、不動産査定前にリフォームをするのは一旦ストップしてください。
なぜならリフォームでお金をかけたからといって、必ずしもその金額ぶん不動産査定額がアップするとは限らないからです。
100万円かけて直したから、査定額が100万円UPするわけではなく、むしろトータルでマイナスになってしまうことも考えられます。
お風呂場やトイレ・洗面・キッチンなど日常の使用頻度が高い場所は、おのずと汚れや摩耗があると思いますが、日常生活を送るうえでその箇所が使用不可な状況でない限り一旦そのまま不動産査定してもらいましょう。
リフォームをするかどうかは、あなたが不動産査定後に本格的に売却すると決めた後に検討するくらいで十分です。
不動産査定時に必要な費用は?
不動産査定の依頼先には大きく4つの選択肢があります。
不動産鑑定の依頼先
- 不動産鑑定士(有料)
- ネットでの一括査定(無料)
- 不動産会社(無料)
- 銀行などの金融機関(無料)
※住宅ローンの残債が残っている場合や住み替えを検討している方は一旦銀行へ相談されるとよいでしょう。
不動産会社等による不動産査定が無料なのは、自社に仲介を依頼してもらうための営業活動の一環なので無料で行っているという面と、不動産査定の時点で手数料をもらうのは違法だからという理由です。
一方、不動産査定の依頼先の中で、不動産鑑定士による査定のみ有料(10万円~)となります。
不動産鑑定士による査定は、鑑定評価といってとても査定精度が高く、一般的な不動産査定の方法では評価しにくい場合や、不動産の価値証明が必要な場合に依頼するのがよいでしょう。
不動産鑑定士に依頼する場合の具体例
- 査定対象不動産を複数の相続人と公平に財産分割する必要がある
- 持っている不動産を担保に融資を借りたいとき
- ホテルや病院・ゴルフ場など、特殊な不動産の査定が必要なとき
もちろんあなたの不動産を不動産鑑定士に査定してもらいたい場合は依頼してもかまいませんが、一括査定で依頼すれば無料なので、状況に合わせて選択してみてください。
不動産査定は必ず不動産会社に頼まないといけない?
ここまで不動産査定方法について詳しく解説してきましたが、「どうしても不動産会社に不動産査定を頼みたくない!」という方や、「個人情報を伝えたくないけど査定額は知りたい!」という方もいるかもしれません。
その場合には、AI査定という方法もあります。
物件情報を入力すると、人工知能AIが不動産の価値を査定してくれるサービスです。
AI査定サービスを利用すれば、めんどうな手続きなしに、ある程度根拠のあるデータに基づいた不動産査定額が自分で確認できる、というメリットがあります。
ただAI査定はマンション向きのサービスではあることと、AI査定とうたいながらも、結局はメールアドレスなど個人情報の登録が必要なサイトもありますのでご注意ください。
【まとめ】不動産は1つとして同じものはないからこそ不動産査定が必要
不動産の査定方法には、机上査定と訪問査定があり、それぞれの特徴や準備内容を知っていただけたのではないでしょうか?
不動産の価値は社会情勢の影響もあるので、原価法で2,000万円と計算できたからと言って「査定額は2,000万円!」と断言できないからこそ、1件ずつプロの目で不動産査定をしてもらう必要があります。
あなたがお持ちの不動産をまだ売るかどうか決めかねている状態でも、まずは今いくらの価値があるのか確認してみて、検討してはいかがでしょうか?
そしてあなたの不動産がいくらで売れるか知ることと同じくらい、不動産売却の今後のパートナーとなる不動産会社選びも大切です。
できれば複数の不動産会社に査定を依頼して、あなたにとって最適な不動産パートナーを見つけましょう。
一括査定なら、一度の申し込みで複数の不動産会社に査定依頼ができるので、とても便利です。
不動産の売却を検討しはじめた時にはぜひご活用ください。
- 執筆者:Narumi
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以前に不動産会社で働いており、在職中に宅地建物取引士の資格を取得。「不動産売買」は人生の中で一番大きなお金を目にする機会だからこそ、法令と実務に基づいたより良い情報を伝えることを信念としている。>>詳細はこちら