マンションや戸建てなどの不動産を、不動産会社に依頼して売却するには、必ず媒介契約を交わします。
不動産会社に売却を依頼した方はすでに知っている言葉かもしれませんが、聞き覚えがあってもなくても、媒介契約の意味がわからずモヤモヤしている方も多いのではないでしょうか?
「媒介契約って何を契約するものなの?絶対に必要なの?」
「媒介契約にはいくつか種類があるみたいだけど、どれがいいの?」
「何かよくわからないまま媒介契約書に印鑑を押すのは不安……。」
不動産会社は媒介契約を交わすことに慣れているので、あなたが抱える疑問を十分に説明をしないまま、媒介契約を交わそうとするかもしれません。
もちろん悪気はない不動産会社もありますし、反対にあなたが媒介契約について知らないことをいいことに、あえて重要な説明をしない不動産会社もあるのです。
どちらにしても媒介契約について何も知らないまま契約を交わすと最悪の場合、不動産を売却できないまま売れ残ります。
ですが安心してください!媒介契約のことについて知り、契約時の注意点さえ押さえておけば、変な不動産会社と媒介契約を交わして売却に失敗することはありません。
すでに媒介契約を交わしている方も、今回紹介する記事を読んで、いい不動産会社を見極めて、必要があれば契約を解除して新しい不動産会社と媒介契約を交わしましょう。
今回は、不動産売却の前に知っておくべき媒介契約と契約前の注意点について紹介していきます。
不動産会社と交わす「媒介契約」とは?
媒介契約とは、不動産会社が売主に代わって、買主に不動産の売却することを約束する契約のことです。
「契約」と聞くと慎重になるかもしれませんが、じつは媒介契約自体はそれほど重要な契約ではありません。
媒介契約を交わして費用がかかるわけでもないですし、強い拘束力があるわけでもないです。
いわば「あなた(不動産会社)に私の不動産を預けるので売却してください!」と、口約束ではなく書面で約束したものといえばイメージできるでしょうか。
口約束ではなく正式に書面で契約する理由は、不動産会社が将来的に得られる報酬を約束してほしいからです。
不動産会社は売主に代わって物件を売却してはじめて報酬(仲介手数料)を得られます。
反対に言えば、不動産会社は物件を売るまで報酬が得られません。
不動産会社が物件の購入してくれる買主を探している間に、売主が他の不動産会社を経由して物件を売却すれば、買主探しにかけた時間がムダになってしまいます。
そこで不動産会社は、「物件を必ず売却するので3ヶ月間は他の不動産会社に売却依頼をしないと約束してください!」と売主へ念を押すためにできたのが媒介契約です。
媒介契約の種類によっては、他の不動産会社へ売却依頼できるものもありますが、必ず規制があります。
次は3種類ある媒介契約について説明しましょう。
不動産会社が用意する媒介契約には3種類ある
媒介契約は、「一般媒介」「専任媒介」「専属専任媒介」の3種類です。
これら3つの媒介契約はそれぞれ契約内容と規制が違います。
まず契約内容には、1. 同時に複数の不動産会社と媒介契約を交わせるか、2. 売主が自ら買主を探せるかどうかの違いがあります。
一般媒介 | 専任媒介 | 専属専任媒介 | |
---|---|---|---|
1. 同時に複数の不動産会社と 媒介契約を交わせる |
◯ | × | × |
2.売主自ら買主を探せる | ◯ | ◯ | × |
契約内容が違う3種類の媒介契約が用意されているのは、売主の意向にあわせて自由な不動産売却を行えるようにするためです。
そして契約内容に沿ってきちんと業務を遂行できるよう、不動産会社側には規制が設けられています。
細かな規制がいくつかありますが、主な規制の違いは「3. 契約期限」「4. 売主への売却活動報告義務」「5. 指定流通機構への登録義務」の3つです。
一般媒介 | 専任媒介 | 専属専任媒介 | |
---|---|---|---|
1. 同時に複数の不動産会社と 媒介契約を交わせる |
◯ | × | × |
2.売主自ら買主を探せる | ◯ | ◯ | × |
3.契約期限 | 規制なし※1 | 3ヶ月以内 | 3ヶ月以内 |
4.売主への売却活動報告義務 | 義務なし | 2週間に1回以上 | 1週間に1回以上 |
5.指定流通機構への登録義務※2 | 規制なし | 契約日から 7日以内 |
契約日から 5日以内 |
※1. 規制は無いが3ヶ月に一度の更新は必要
※2. 宅地建物取引業法にもとづいて不動産情報を取り扱う機関。不動産会社は指定流通機構に登録される物件を見て取引を行う
では表にある違いによって、3つの媒介契約にはどんな特徴があり、どういったときにどの媒介契約を選択すればいいのでしょうか?
3種類の媒介契約について一つずつ紹介していきます!
一般媒介契約
一般媒介契約は、複数の不動産会社に売却を依頼したい人にオススメです。
唯一複数の不動産会社に売却依頼ができる媒介契約なので、物件を少しでも高く購入してくれる買主が見つかりやすいです。
また一般媒介は売主が自ら買主を探せるので、交友関係が広く、不動産会社を頼らずとも買主を探せる方は一般媒介で契約してもいいでしょう。
ただし一般媒介は、不動産会社側の規制が緩いので、売主側から不動産会社へ連絡を取らないと、思うように売却活動が進みません。
とくに注意しなければならないのが、「売主への売却活動報告義務」に規制がないこと!
専任媒介や専属専任媒介の場合は、売却活動の進捗について売主側へ定期的な報告をしなければなりませんが、一般媒介には報告義務がありません。
なので不動産会社は報告義務がないのをいいことに、あなたの物件に対する売却活動を後回しする可能性が高いです。
不動産会社と常にコミュニケーションをとり、不動産会社とともに積極的な不動産売却ができる人だけ一般媒介で契約しましょう。
一般媒介契約がオススメの人!
- 複数の不動産会社に売却を依頼したい人
- 自分で買主を探せるほどの交友関係を持つ人
- 不動産会社へ積極的に連絡をとって売却活動に力を入れられる人
専任媒介契約
専任媒介契約は、ある程度不動産会社に売却を任せたい人にオススメです。
不動産売却は最短でも3ヶ月、長ければ1年以上もの期間を要します。
売却期間中は内覧や不動産会社との打ち合わせなどもあり、家庭や仕事、普段の生活を送る時間が削られてストレスを溜めることもあるでしょう。
少しでも家族へかかる負担を減らすなら、不動産会社に一存できる専任媒介契約の方が楽です。
専任媒介なら売主から連絡をしなくても不動産会社から売却についての報告を行ってくれますし、契約期間も3ヶ月なので1つの不動産会社と長く付き合う必要もありません。
ただし専任媒介で契約すると、本来高値で売れるはずの不動産が安価で売却されてしまう可能性があります。
不動産会社一社としか契約できないことをいいことに、専任媒介で契約した売主の物件を不動産会社が囲い込み(※)をしてしまうのです。
※囲い込みとは、不動産会社が売主の物件を独占するために、他の不動産会社へ売主の物件を紹介しないこと。
囲い込みされてしまうと売主の物件情報は外に出回りづらくなるので、買主が売主の物件に気づかないまま売却の機会をどんどん逃していきます。
売り逃しが続き売却期間が延びていくと、値引きせざるを得なくなり、本来なら売れていたはずの価格で売れなくなっていくでしょう。
もし専任媒介で契約をするなら、あらかじめ値下げをはじめる時期や値下げ幅について不動産会社と話し合った上で、契約するようにしてください。
専任媒介契約がオススメの人!
- 不動産会社に売却を任せたい人
- 不動産の値引きに対応できる人
専属専任媒介契約
専属専任媒介は専任媒介と位置づけはほとんど変わりません。
ただ専属専任媒介の方は、売主が自ら買主を探すことができないので注意してください。
不動産会社に売却を任せたい人、以前にもお世話になったことがある不動産会社や友人が働く不動産会社に売却を依頼したい人は、専属専任媒介で契約してもいいかもしれません。
ですがムリに専属専任媒介で契約する必要はないでしょう。
専属専任媒介契約がオススメの人!
- 不動産会社に売却を任せたい人
- 不動産会社のことを信頼している人
不動産売却なら「一般媒介契約」がオススメ!
すでに3種類の媒介契約について紹介しましたが、その中でオススメなのは一般媒介契約です。
オススメの理由は、物件をすぐに売却できるからです。
すでに紹介したように、一般媒介契約なら複数の不動産会社に物件の売却依頼ができます。
複数の不動産会社が同時に買主を探してくれるので、早く買主が見つかり売却できるでしょう。
ですが不動産会社は売主に一般媒介で契約されることを好みません。
一般媒介で契約されれば、売主は複数の不動産会社と媒介契約を交わす可能性があるので、他社に売主を取られて報酬を得るチャンスを逃すことになります。
なので不動産会社はあの手この手で、売主を専任媒介または専属専任媒介で契約させようとするでしょう。
「一般媒介よりも専任媒介のお客様を優先する」「一般媒介だと売れない」「どこの不動産会社も一般媒介のお客様を後回しにする」など言われます。
たしかに専任媒介で契約した方が優先して売却活動が行われるかもしれませんが、買主さえ見つければ売主を逃さないわけですから、一般媒介だからといって手を抜かれることはありません。
ここは「一般媒介で契約させてください」とキッパリ言い切りましょう。
もしも不動産会社に専任媒介で押し切られそうになったときは、以下を参考にしてみてください。
一般媒介を嫌がる不動産会社の説得方法
- 「1週間に1回以上内覧の申し込みがあれば専任媒介に切り替えます」
- 「仲介手数料を値引きしてくれるなら専任媒介で契約します」
物件の売りはじめは、最低でも1週間に1回以上は内覧の申し込みがあるものです。
不動産会社にどこまで実績があるかわからないですから、「一度一般媒介で様子を見ます」というニュアンスで不動産会社に伝えましょう。
それでも不動産会社が一般媒介を渋るようでしたら、「専任媒介で契約する代わりに、仲介手数料を値引きしてほしい」と伝えると交渉してみるいいかもしれません。
不動産会社が作成する媒介契約書の内容と確認項目
媒介契約の種類が決まれば、あとは媒介契約書にサインをするだけです。
媒介契約には主に次の9つのことが書かれています。
媒介契約書面の記載事項
- 売却物件を特定する住所や面積などの情報
- 物件の媒介価格
- 媒介契約の種類
- 媒介業務が遂行されたときの報酬額
- 媒介契約の契約期間
- 媒介契約の解除について
- 媒介契約が国土交通大臣の定める標準約款にもどづくものかの有無
- 指定流通機構(レインズ)への登録に関する有無
- ホームインスペクションの仲介に関する事項
媒介契約は、不動産会社とどのように売却活動を進めていくのかを確認する作業です。
媒介契約の記載項目を軽く読み飛ばしてしまうと、不動産会社が都合よく売却活動を進めてしまうので、一つひとつの項目について理解しておきましょう。
もちろん媒介契約の前に契約書に関する説明があるかと思いますが、一度の説明では理解できないことも多いと思うので、上記9つについてわかりやすく紹介します。
またそれぞれの項目で、売主に確認してほしいことがあるので、最後まで読んでみてください。
1. 売却物件を特定する住所や面積などの情報
どの物件を売るのかが誰にでもわかるように、媒介契約書には売却する不動産の基本情報が記載されます。
- 物件の所有者と登記名義人の住所・指名
- 物件の所在地
- 売却する土地の情報
・実測
・公簿
・地目
・権利内容(所有権か借地権) - 売却する建物の情報
・建築面積
・延べ面積
・種類
・構造
・間取り - 売却する建物がマンションの場合の情報
・マンションの名称
・間取り
・専有面積
・構造
・共有持分
不動産情報は、物件を購入したときの売買契約書を見ればすべて記入できます。
あらかじめ売買契約書は用意しておきましょう。
確認ポイント!
記載事項に誤りがないように購入時の売買契約書を用意する
2. 物件の媒介価格
媒介価格とは、物件の売り出し価格のことです。
媒介価格は一般的に不動産会社が査定した価格や、物件周辺で売りに出されている不動産の価格を参考にして決められます。
もし媒介価格に納得がいかないときは、不動産会社に納得のいく説明をしてもらいましょう。
まれに査定額に比べてかなり低い価格で記入されていることがあります。
不動産会社は売主を獲得したいがために、高い査定額を出して売主の関心を引き、媒介価格を決めるときになって価格を下げることもあるのです。
あなたの不動産がいくらで売れることになるのかを決めるものなので、媒介価格は必ず確認しましょう。
確認ポイント!
媒介価格が適正なものであるか不動産会社の説明を受ける
3. 媒介契約の種類
交わす媒介契約によって、契約書はわけられています。
あなたがこれから契約する媒介契約の種類と、契約書があっているかどうか確認しましょう。
一般媒介で契約するつもりなのに、不動産会社が用意した契約書類は専任媒介用であることもあります。
売主との信頼関係を壊すようなことを不動産会社が故意にすることは考えられませんが、必ず事前の確認をしてください。
確認ポイント!
媒介契約の種類と契約書の種類があっているか確認する
4. 媒介業務が遂行されたときの約定報酬額
媒介契約を交わし、不動産会社が仲介した買主と無事に売買取引ができたときに、売主は不動産会社に対して約定報酬(仲介手数料)を支払わなければなりません。
なので媒介契約には、媒介価格で売買取引した際の約定報酬額が記載されています。
約定報酬額の上限は宅地建物取引業法で定められているので、必ず上限内におさまっている価格であるか計算しましょう。
約定報酬額の計算式
媒介価格200万円未満 | 媒介価格×5% |
---|---|
媒介価格200~400万円未満 | 媒介価格×4%+2万 |
媒介価格400万円以上 | 媒介価格×3%+6万 |
いくらになるか気になる方は、仲介手数料の自動計算書で計算してみてください。
約定報酬額に加えて、別の報酬額を求めてくるなどの違法行為を行う不動産会社もいるようです。
売主が不動産会社へ特別に依頼して発生した広告費や、遠隔地への出張費などがあれば、売主負担となりますが、それ以外で売主が不動産会社へ支払う報酬はありません。
本当に不動産会社へ支払うべき報酬であるかどうかを確認してください。
確認ポイント!
- 約定報酬額が法律で定められた上限に納まっている
- 約定報酬以外の報酬についての記載がないか
5. 媒介契約の契約期間
専任媒介(専属専任媒介含む)は、契約期間が3ヶ月以内と定められています。
一般媒介に関しては契約期間の規制はありませんが、専任媒介と同じように原則3ヶ月と決められており、3ヶ月を超えて契約する場合には都度契約の更新が必要です。
もし媒介契約書に3ヶ月を超える契約期間の記載があっても、強制的に3ヶ月とされます。
契約期間満了後に継続して同じ不動産会社に売却依頼をするときには、契約の更新をしましょう。
媒介契約期間中に物件の値下げを行い、媒介契約書に記載されている媒介価格と約定報酬額に変更があったときは契約書の更新を行いますが、契約期限が更新されることはありません。
たまに不動産会社が間違えて契約期間まで更新していることがあるので、契約書にサインをする前に必ず確認してください。
確認ポイント!
- 契約期間が3ヶ月以内である
- 契約書内に契約期間の自動更新をほのめかす記載がないか
- なんらかの理由で契約書が更新されたときに契約期間まで更新されていないか
6. 媒介契約期間内の解除について
媒介契約期間内に契約の解除はできますが、場合によっては違約金が発生することもあります。
媒介契約書の約款に書かれている契約解除に関する内容をまとめると次のようになります。
- 不動産会社が売却活動を怠って解除するときは違約金なし
- 不動産会社に不正があり解除するときは違約金なし
- 他の不動産会社で売買取引が成立した場合に解除するとき違約金あり
- 売主が反社会勢力に関わっていると判明して契約が解除されるときは違約金あり
- 契約解除後2年以内に不動産会社が紹介した買主と個別に売買取引をしたら違約金あり
ようするに売主側に非がある場合は違約金が発生し、不動産会社側に非がある場合は違約金が発生しません。
以上5つのうち「他の不動産会社で売買取引が成立した場合に解除するとき違約金あり」
に関しては、一般媒介と専任媒介(専属専任媒介含む)で違います。
一般媒介の場合は、不動産会社が売却活動において要した費用だけ請求されますが、専任媒介は約定報酬額(消費税除く)全額が請求されます。
そもそも専任媒介は、他の不動産会社と重複して売却を依頼できないので、売主側の契約違反です。
媒介契約の解除する可能性がある方は、売買契約書に書かれている契約解除に関する項目をしっかり読んでおきましょう。
確認ポイント!
- 契約解除をする際に違約金が発生する条件について不動産会社に聞く
- (一般媒介において)他の不動産会社で売買取引が成立したときの解除違約金がいくらになるのか明確にする
7. 媒介契約が国土交通大臣の定める標準約款にもどづくものかの有無
媒介契約書には、必ず契約における約款(契約条件)が記載されています。
契約書に書かれている約款は不動産会社が独自に作成したものもあれば、国土交通大臣が定めた標準約款を使用している不動産会社もあります。
約款の種類がどちらであっても、国土交通大臣の定める標準約款であるかどうかの記載をしなければなりません。
標準約款であるかどうかの記載がない場合は、不動産会社としての信憑性を疑った方がいいでしょう。
また記載があっても標準約款でなかった場合は、国で定められた約款でないため、不動産会社にとって都合のいい記載がないかしっかり読みこむ必要があります。
確認ポイント!
- 国が定める標準約款であるかどうか確認する
- 不動産会社が定める約款である場合は記載事項をきちんと確認する
8. 指定流通機構(レインズ)への登録に関する有無
指定流通機構とは、国土交通大臣が認定した不動産情報のネットワークを運営する機関のことで、通称レインズとも呼ばれています。
不動産会社は、レインズに登録されている不動産情報を見ながら、他の不動産会社の物件を把握しています。
専任媒介や専属専任媒介で契約する場合は、必ずレインズに売主の物件情報を掲載しなければなりません。
一般媒介の場合はレインズへの登録義務はないですが、売主側からレインズへの登録をお願いしましょう。
レインズに登録されれば、媒介契約を交わした不動産会社だけでなく、他の不動産会社も物件情報を閲覧できるため、他の不動産会社を経由して買主が見つかりやすくなります。
もしレインズへの登録が「無」になっていたときは、不動産会社に登録してもらうよう伝えてください。
確認ポイント!
一般媒介で契約する場合はレインズへの登録を要求する
9. ホームインスペクションの仲介に関する事項
ホームインスペクションとは、住宅診断のことです。
住宅の設計や施工に詳しい専門家が、住宅に異常がないか診断を行います。
中古住宅や中古マンションを売却したい売主は、ホームインスペクションを受けた方がいいでしょう。
何も異常がなければ購入する買主も安心ですし、何か欠陥があれば修繕するか買主にそれを伝える義務があります。
ですが不動産会社が仲介する業者を利用する必要はなく、自分で業者を探してホームインスペクションを行っても構いません。
むしろ自分で探して依頼したほうが、ホームインスペクションにかかる費用が押さえられます。
不動産会社に仲介されると、費用に加えて仲介手数料もかかってしまうので、媒介契約書にある「建物状況調査を実施する者のあっせんの有無」は「無」にしましょう。
確認ポイント!
自分で探した業者にホームインスペクションを依頼する場合は、業者の仲介を断る
悪い不動産会社とは契約しない!媒介契約前の注意点
どこの不動産会社に売却を依頼するかで、これからの不動産売却が成功するかどうかが決まります。
なので媒介契約を交わす不動産会社は、慎重に選ばなければなりません。
ですが大手を含めて全国には何万もの不動産会社がある中、本当に信頼できる不動産会社を探すのは大変かと思います。
そこで媒介契約を交わす不動産会社選びに失敗しないために、次の注意点を意識して契約を交わしましょう!
- 一般媒介で複数の不動産会社と契約する
- 媒介契約時に不動産会社へこまめな連絡を要求する
- 信頼できる不動産会社とだけ専任媒介で契約する
- 媒介契約を交わす前に仲介手数料の交渉をする
一般媒介で複数の不動産会社と契約する
すでに説明したように、不動産会社と媒介契約を交わすなら一般媒介がオススメです。
一般媒介で契約し、複数の不動産会社と媒介契約を交わせば、その分買主を見つかりやすくなり、売却活動が早く終わります。
ただ不動産会社はなかなか一般媒介で契約されることを好ましく思わないので、媒介契約を交わすときに一苦労があるかもしれません。
一般媒介でも快く売却依頼を引き受けてくれる不動産会社があれば、当たりだと思いましょう。
媒介契約時に不動産会社へこまめな連絡を要求する
不動産会社の売主に対する売却活動の報告義務は、専任媒介が2週間に1回、専属専任媒介が1週間に1回です。
ですが規制に縛られることなく、必要に応じて連絡をこまめにとってもらうよう不動産会社にお願いしましょう。
とくに一般媒介は、売主に対する売却活動の報告義務がありませんから、不動産会社にこまめな連絡を要求する必要があります。
- 物件の内覧が終わったあと
- 売却物件の周辺で似た条件の物件が売りに出されたとき
- 売却物件の周辺で大型建設が決まったとき
少なくとも以上3つのタイミングで連絡をもらうようにし、売却活動がうまくいくよう不動産会社とコミュニケーションをとりましょう。
信頼できる不動産会社とだけ専任媒介で契約する
一般媒介で契約を交わしても、1つの不動産会社にしか売却の依頼をしないのであれば、専任媒介または専属専任媒介で契約しても問題ありません。
ただし専任媒介は、信頼できる不動産会社とだけ契約をしましょう。
すでに紹介したように専任媒介や専属専任媒介で契約すると、他の不動産会社と媒介契約を交わせません。
なのであなたは他の不動産会社と比較できないまま、1つの不動産会社のさじ加減で売買するしかなくなります。
悪徳不動産会社と専任媒介で契約してしまうと、あなたが損する可能性もあるのです。
たとえば売却希望価格4000万円の物件を不動産会社に売却依頼をしたら、買主Aから値下げ交渉があり、しぶしぶ3000万円で売却したとします。
ですが買主Aは不動産会社の共謀者で、再び不動産会社を仲介して物件を買主Bに5000万円で売却することがあるのです。
この場合、他の不動産会社にも売却依頼をしていれば、あなたの物件が必要以上に安く売られることはなかったでしょう。
専任媒介で契約するなら、あなたの物件を確実に適正価格で売ってくれる不動産会社と契約するようにしてください。
媒介契約を交わす前に仲介手数料の交渉をする
物件を無事に売買取引できたら、売主は不動産会社に対して仲介手数料(報酬)を支払います。
じつはこの仲介手数料は法律で上限は決められていても、下限は決められていません。
なので売主と不動産会社の間で交渉すれば、仲介手数料を自由に決められるのです。
ただし媒介契約を交わしたあとでは、仲介手数料の交渉は難しいので、媒介契約を交わすときに値引き交渉を行います。
仲介手数料を値引きするコツ
- 専任媒介で契約する代わりに値引き
- 希望価格で売却できないときは値引き
一般媒介を嫌がる不動産会社を逆手に取り、仲介手数料の値引きをしてみましょう。
もしくは希望価格で売却できないときは値引きをしてもえるかどうか交渉してみてください。
もちろん希望価格が高すぎれば売れませんから、不動産会社が提示した査定額の115%を目安に希望価格を設定し、値引き交渉をしましょう。
不動産会社も仲介手数料がほしいですから、売主が希望する価格で売却できるよう力を入れるはずです。
媒介契約の期間を待たずに契約解除するべき不動産会社の特徴
この記事を読んでいる方の中には、すでに媒介契約を取り結んでいる方もいるかと思います。
今の不動産会社に何かしらの不満があり、「一般媒介契約にすればよかった……」「他の不動産会社に売却を依頼したい!」と感じている方は、媒介契約を解除しましょう。
以下の3つどれかに当てはまるのであれば、別の不動産会社に売却依頼をしてみてください。
- 囲い込みをしている不動産会社
- 媒介契約書に手書きで書き加える不動産会社
- 過去に何度も行政処分等を受けている不動産会社
物件を囲い込みしている不動産会社
囲い込みとは、売主の物件情報を1つの不動産会社が事実上独占している状態をさします。
不動産会社が囲い込みを行う理由は、売主と買主の両方から報酬(仲介手数料)を得るためです。(両手取引)
たとえば不動産会社Aが売却依頼を受けた売主に、買主を紹介すれば売主と買主の両方から仲介手数料を得ることになります。
ですが売主に紹介する買主が、他の不動産会社Bが仲介する買主である場合は、不動産会社Aは売主からしか仲介手数料を得られません。
不動産会社側からすれば、両手取引を行ったほうが売上になるので、可能であれば売主に紹介する買主は自分たちで見つけたいのです。
そのため不動産会社は、売主の不動産を「商談中」の物件として扱い、他の不動産会社が売主の物件に手を出せないようにして囲い込みを行います。
専任媒介や専属専任媒介で契約を交わすと売主の物件はレインズに必ず登録されるので、本来なら他の不動産会社から買主紹介の問い合わせがきます。
ですが「商談中」の物件扱いにされてしまえば、レインズに登録されても他の不動産会社から買主紹介の問い合わせがなくなり、売却の機会を逃してしまうでしょう。
売却を依頼した不動産会社が囲い込みをしているかを確認する方法は、不動産会社のフリをして自分の物件を問い合わせてみるしかありません。
不動産会社に電話をし、「◯◯町の▲▲万円の物件はございますか?」と伝え、商談中でもないのに「そちらの物件は商談中です」と返答されれば囲い込みです。
このように囲い込みが疑われたら、媒介契約を解除して他の不動産会社と一般媒介で契約し直した方がいいかもしれません。
媒介契約書に修正を加えている不動産会社
媒介契約を交わしただけでは不動産会社には何の利益もなく、売主と買主が売買契約を交わしてはじめて、媒介契約が履行されます。
そのため不動産会社の中には、売主を逃さないために媒介契約書を都合よく修正し、売主が媒介契約を解除しないように仕向けるところもあるのです。
もし記入前の媒介契約書に次の行為がみられたら注意しましょう。
- 「国土交通省が定めた標準約款にもどづく契約書です」などの記載がない
- 標準約款にもどづく契約である記載があっても、約款の一部が二重線または修正テープで消されている
- 標準約款にもどづく契約である記載があるのに、標準約款と違う箇所がある
- 一部空白の部分があるのに契約書のサインを求められる
- 希望した媒介契約の種類とは別の媒介契約書にサインを求められた
不動産会社側からきちんとした説明があり、あなたが納得できれば問題ありません。
ですがどんな理由があっても、上にあげた行為が見られる不動産会社とは契約しない方がいいでしょう。
すでに媒介契約を交わしてしまった方は、解除して別の不動産会社に売却を依頼したほうがいいかもしれません。
過去に何度も行政処分を受けている不動産会社
お客様のことを考えてまじめに不動産業を営む不動産会社がほとんどかと思いますが、中には会社の利益を守るために、違法行為スレスレで不動産業を営んでいるところもあります。
必ずしも違法行為スレスレの不動産会社が悪いわけではありませんし、悪い不動産会社だとしても法に触れていないので見分けるのは難しいでしょう。
ですが明らかに違法行為をしている不動産会社は国から行政処分を受けるので、検索をすればすぐにわかります。
国土交通省が運営するネガティブ情報等検索システムでは、過去5年間で行政処分を受けた不動産会社を検索できます。
処分の種類から詳細まですべて掲載されているので、あなたがこれから媒介契約を交わす不動産会社、すでに媒介契約を交わしている不動産会社の履歴を調べてみましょう。
行政処分を受けて改心している不動産会社もあるかと思いますが、何か不審な点があれば媒介契約は見送ったほうがいいかもしれません。
不動産会社との媒介契約でよくある質問
不動産会社と媒介契約を交わすのに費用はかかるのか?
不動産会社と媒介契約を交わすだけで費用がかかることはありません。
媒介契約を交わし、不動産会社があなたと買主の売買取引を無事に仲介できたら、はじめて費用(報酬の仲介手数料)がかかります。
売買取引後に請求される費用に関しては、媒介契約の際に不動産会社からの説明、または媒介契約書に報酬額の記載があるかと思うので、確認してみてください。
ちなみに売買取引後に売主と買主側の都合によって売買契約の解除をする場合は、物件の売却ができていなくても不動産会社に報酬を支払わなければならないので注意しましょう。
媒介契約を自分から解除すると違約金が発生するのか?
媒介契約書の約款にある違約金が発生する条件に該当するのであれば、約款にあるとおりの違約金が請求される可能性はあります。
たとえば複数の不動産会社と一般媒介で契約し、ある不動産会社に仲介された買主と売買取引をした場合、他の不動産会社とは媒介契約を解除することになるので、違約金が発生するでしょう。
例にあげた条件で媒介契約を解除するときの違約金は、不動産会社が買主を探すために要した分の費用が請求されます。
違約金を避けるのであれば、他の不動産会社との媒介契約期限が切れてから、不動産会社を一社に絞って買主と売買取引をする方法もあります。
まずは媒介契約の時点で違約金が発生する条件について、不動産会社から詳しい説明を受けておきましょう。
バレなければ複数の不動産会社と媒介契約してもいいのか?
複数の不動産会社と媒介契約を交わせば、必ずバレます。
媒介契約を交わすと売主の物件はレインズに登録され、どこの不動産会社が物件を取り扱っているのかがわかります。
なので売主から売却の依頼を受けた物件が、他の不動産会社から掲載されていれば、依頼を受けた不動産会社はすぐに気がつくでしょう。
他の不動産会社と契約をしてはいけない専任媒介と専属専任媒介で契約している方は、バレないと思って他の不動産会社に売却依頼をしないようにしてください。
一般媒介は複数の不動産会社に売却依頼をしてもいいですが、他の不動産会社との媒介契約を報告しなければならない明示型で契約した場合は、必ず不動産会社に報告しましょう。
違反をすると、違約金として約定報酬額(消費税除く)を全額支払わなければなりません。
専任媒介から一般媒介に変更できるのか?
専任媒介で契約した不動産会社に一般媒介への変更を相談してみましょう。
不動産会社との良好な関係を築いていれば、とくに違約金がかかることなく一般媒介への変更ができます。
ですが不動産会社の中には、一般媒介での再契約を避けるために「再契約による違約金(または手数料)がかかります」と言われるかもしれません。
違約金を払わずに一般媒介へ変更したいのであれば、契約期限まで待つしかないでしょう。
ただし契約期限まで待ち、売却活動が長引くと物件が売れなくなる可能性もあるので、よく検討してから媒介契約の種類を変更してください。
媒介契約は必ず更新しなければならないのか?
同じ不動産会社に継続して売却を依頼したいときは、媒介契約を更新しましょう。
ですが媒介契約期限である3ヶ月以内に物件が売れないとなると、継続して同じ不動産会社に売却を依頼しても売れない可能性があります。
売却期間が長引くほど売れなくなるので、ムリに更新はせず一度不動産会社を変えて売却活動を再スタートしてみてください。
契約解除がしづらいときはどうすればいいのか?
媒介契約の解除をしたくても、不動産会社に伝えられない方もいるかと思います。
契約解除をしづらい方は、契約期間が終了するまで待ちましょう。
ただし契約期間の満了まで待つと、その間売却活動が進みません。
買主に売り逃す可能性もあるので、契約解除を言い出しづらくても不動産会社にきちんと伝え、気持ちを切り替えて売却を再スタートさせましょう!
【まとめ】信頼できる不動産会社と媒介契約を交わそう!
ここまで媒介契約について紹介してきましたが、どこの不動産会社とどの媒介契約で契約するかイメージできましたか?
媒介契約を交わす不動産会社で、あなたの物件が売れるかどうかが決まります。
信頼できる不動産会社の特徴
- 嫌な顔せず一般媒介で契約させてくれる
- 媒介契約時に売主の要求を真摯に聞いてくれる
- 多くの不動産会社と関係を築き、多方面からの買主紹介が期待できる
- 媒介契約の説明を丁寧に行う
- 過去に行政処分を受けた経歴がない
全国には32万もの不動産会社があります。
一つの不動産会社にこだわる必要はないので、信頼できる不動産会社と媒介契約を交わし、これからはじまる売却活動を必ず成功させましょう!
不動産を売却するにあたって必ずチェックしたい一括査定サービス
今は、一社ずつ不動産会社を自分で探して比較するといった面倒なことをする必要もありません。
インターネット上であなたが売りたい、あるいはどれくらいの価値があるのか知りたいと思っている不動産情報と個人情報を入力するだけで、一度に査定依頼が行えます。
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